「おはなし道具箱 ２」掲載
８月第２週 神さまへの歌１ 「神さまがわたしたちを造られた」
『主はわたしたちを造られた わたしたちは主のもの その民 主に養われる羊の群れ』詩編１００編
「解説」
昔、イスラエルの民が建てた王国が栄えていた頃、都エルサレムの中心にはソロモン王が建築した神殿がそびえていました。大きな祭のときには多くの人々が神殿に集い、盛大な礼拝を献げたものでした。
と言っても、多くの人々は、神殿の建物の中に入って座って礼拝を献げたわけではありません。建物の中に入ることができるのは祭司など限られた人々だけでした。神殿の建物の前に、回廊で囲まれた広場があり、一般の人々はここに集まって青空の下に立ったまま、礼拝に参加したのです。（乾燥気候のエルサレムでは、雨の心配はあまりありませんね。）
この、礼拝のための広場、「主の庭」で礼拝を献げるために、別のところで集合した人々は、整然と列を整え、神殿の門から中へと行進して入って行ったことでしょう。
詩篇１００編は、こうした礼拝にむかう行進の情景を歌ったものと考えられます。主なる神に礼拝を献げる喜びを、皆で声高く歌いながら、門に進み、主の庭に入り、喜び歌って神の前に進み出ていくのです。
信仰深いある詩人が、そのように整然と進んでいく行列を見たとき、ふと、羊の群れを連想したのでしょう。よい羊飼いに養われ、守られている羊たちが、羊飼いを慕い、導かれるままに喜んで群れをなしてついていく情景を、そのまま礼拝にむかう人々が行進する光景に重ね合わせたのです。
礼拝のために神殿に向う人々が羊の群れだとすると、羊飼いは、いうまでもなく神さまご自身です。羊たちが、自分たちを養い守ってくださる羊飼いを知り、飼い主として従っていくように、礼拝する人々も、神さまを主人とし、慕い、信じ、従っていくのです。
さて、このような行進は、礼拝の始まる前に心を高ぶらせ、ときめかせるものであったでしょう。それと共に、一緒に礼拝に向っていく人々の連帯感・一体感を強める役割も大きかったと考えられます 。礼拝は、神さまと、私ひとりとの関係を造りあげるだけのものではなく、共に礼拝を献げる「わたしたち」の連帯をも造りだすものです。さまざまな人々が一緒に喜び歌いながら神の御前に進んでいく体験を想像してみたいと思います。
例話は、そんな礼拝へとむかう行進を寸劇にしてみました。台本は、人形劇、指人形、ペープサート、紙芝居にしてもよいですし、子どもたち自身に演じさせることもできます。また、お話として口演してもかまいません。内容的にも、登場人物を増減させたり、人間だけでなく動物などを搭乗させてもいいでしょう。自由に楽しくもちいてください。
「お話の例」
こども（ゆうちゃん）がひとり、歩いてくる。楽しげに歌（『こどもさんびか改訂版』１０６「どんどこどんどこ」）を口ずさんでいる。
反対側からもこども（けいちゃん）。
けい「あ、ゆうちゃん、おはよう」
ゆう「おはよう、けいちゃん」
けい「ゆうちゃん、どこへ行くところ？」
ゆう「いいところ」
けい「ふ〜ん。でも、歌なんかうたって、うれしそうだね。どうして？」
ゆう「それはね、一緒にいくればわかるよ」
けい「へえ、じゃ、一緒にいってもいい？」
いっしょに歩きだす。ゆうちゃんがまた歌いだすと、けいちゃんも声をあわせる。
反対側から、青年がやってくる。
青年「ゆうちゃんとけいちゃん、おはよう」
ゆう、けい「おはよう、おにいさん」
青年「ふたりでどこへ行くところ？」
ゆう、けい「いいところ」
青年「ふ〜ん。でも、歌なんかうたってうれしそうだね。どうして？」
ゆう、けい「一緒にくればわかるよ」
青年「じゃ、一緒にいってもいいかい」
いっしょに歩きだし、みんなで歌いだす。
女の人に会う。
女「あら、ゆうちゃんとけいちゃんとおにいちゃん、おはよう」
三人「おはよう、おばさん」
女「三人でどこへ行くところ？」
三人「いいところ」
女「ふ〜ん、歌なんかうたってうれしそう。どうして？」
三人「いっしょにくればわかるよ」
いっしょに歩きだし、みんなで歌いだす。
車椅子の男の人に会う。
男「おや、ゆうちゃんとけいちゃんとおにいちゃんと奥さん、おはよう」
みんな「おはよう、おじさん」
男「四人でどこへ行くところ？」
みんな「いいところ」
男「ふ〜ん、歌なんかうたってうれしそうだね。どうしてだい？」
みんな「いっしょにくればわかるよ」
いっしょに歩きだし、みんなで歌いだす。
老人に会う。
老人「おや、ゆうちゃんとけいちゃんとおにいちゃんと奥さん、おはよう」
みんな「おはよう、おじいさん」
老人「五人でどこへ行くところ？」
みんな「いいところ」
老人「ほう、歌なんかうたってうれしそうだね。どうしてだい？」
みんな「いっしょにくればわかるよ」
いっしょに歩きだし、みんなで歌いだす。
反対側から若い女性、外国人のリーさん。
リー「（少したどたどしく）おはよう」
みんな「おはよう、リーさん」
リー「六人、みんな、どこ行きますか？」
みんな「いいところ」
リー「歌、うれしい？ なぜ？」
みんな「いっしょにくればわかるよ」
いっしょに歩きだし、みんなで歌いだす。
一行、門の前に到着。
けい「あ、教会だ！」
ゆう「さあ、入ろうよ。こんにちは、神さま！」
一行、歌いながら門の中へ入っていく。